2018ツールド熊野UCI・参戦記
AACA選抜チームがUCI国際レース、20th Anniversary 2018ツールド熊野に出場。
5月31日から6月3日の4日間、熊野地方を舞台とするUCI国際レース、ツールド熊野の挑戦をレポート。
東海地方で行われているシリーズ戦、KINAN AACA CUPの1クラスで頑張りを見せている23歳以下の選手たちなど、今年も5名の選手を選出。メンバーはシェルヴォ奈良から高山恭彰、中京大学から佐藤大紀、川嶋祐輔の2名、ボンシャンスから日野竜嘉、そしてTERMINATOR RTから楠本宏樹、この5名で今年のツールド熊野に挑む。
5月31日、雨模様の中、セレモニー会場であるキナン研修センターへ選手たちが集まってくる。そして3年目の今年も、メカニック、補給等々を万能にこなしてくれるスタッフの池田新二氏も到着。例年の事ながら本当にありがたい。
ライセンスコントロールを終えプロローグを待つ少しの緊張感の中宿舎で準備をしていると、ご多忙にもかかわらず大会ディレクターの大谷壌士氏、KINAN Cycling Teamの加藤康則GMが若い選手の挑戦を激励に訪れて頂いた。このお二方の大会への思い、若い選手たちがUCI国際レースを走る意味、選手たちももちろんだが若いチームを率いる私自身も改めて身の引き締まる思いである。
同日に行われたウエットコンディションでの0.7kmの個人タイムトライアル。
AACA選抜の最初の出走は楠本。初めての国際大会にもかかわらず大きな緊張を感じさない走りで、54秒台の27位でゴール。多くの国内外のトップ選手が走る中、その選手たちに遜色のない走りを見せた楠本。その好走を誰よりも喜んでいたのが大谷ディレクターでありAACA選抜を気に掛けてくれていること、そして、人としての温かさを感じずにはいられないのだ。続いて川嶋、日野、佐藤、高山と出走し、落車も無く無難にレースを終え明日の第1ステージへ繋げていく。
6月1日、昨日とは打って変わって暑いくらいの晴天。赤木川清流コースは16.3kmを7周回する113kmのハイスピードコースだ。選手たちはコース両端の細い区間前のポジショニング、そのあとのスピードアップに注意することなどを確認。
新宮市の新庁舎前からの熊野川温泉さつきまでのパレード走行。そしてそこからのアクチュアルスタートが切られる。
予想通りのハイペースでレースは進む。やはりそのペースに苦しみだしたAACA選抜の選手がいる中で、キナンの新城選手とセントジョージの選手の逃げが決まりかけ集団の動きも落ち着き始めるだろうと思った矢先の3周目。トンネル内で発生した落車により、対面通行区間を仕切っていたフェンスが倒壊しレース続行不可との判断。
その後選手たちに伝えられたのは、2周のパレード走行を行うこと。1回目の山岳ポイント以外はすべてノーコンテスト、応援に駆け付けてくれた多くのファンの皆さん、大会開催にご尽力いただいた沢山のボランティアの皆さん、そして毎年楽しみにしている地元の皆さん、その多くの方々に選手たちの走っている姿をみて頂くということで、この大会の存在意義みたいなものを感じる。
そして、行き場のなくなった第1ステージの賞金は、熊野地域の災害復興の為にと全額を寄付することが、審判団、実行委員そしてチーム監督の満場一致で決まった。やはり人としての温かさを感じる大会である。
命びろいしたAACA選抜の選手もいたが、明日の第2ステージへは5名全員が出走できることとなる。
6月2日、この日も昨日同様青空が広がる。名物ともいえるこの熊野山岳コースは、3つの峠を含む109kmで競われる。
風光明媚なロケーションの中を走るこのコース、エキサイティングかつハードなレースは、昨日の第1ステージがキャンセルになったがゆえに、例年よりフレッシュなトップ選手たちによるペースアップは想像に難くない。
スタートをした選手たちの後ろをチームカーで随行する。ラジオツールから聞こえるアナウンスはアタックと吸収の連続で、序盤からのペースの速さが伺える。
ほどなくすると最初の山場である丸山千枚田の登りが始まる。ハイペースでの登りでポツポツと遅れだす選手の中に楠本の姿が。補給ボトルを手渡しゲキを飛ばす。その後も佐藤、高山と遅れてしまう。頂上付近まで粘った川嶋はまだチームカーの隊列が残る位置で丸山千枚田を越える。下りきった後の平坦区間でチームカーの隊列をうまく使いなんとかメイン集団へと復帰する。
メイン集団には日野と川嶋の2名に。そしてついにこのステージ最大の山場である札立峠へ。集団内で思った様に回復することが出来なかった川嶋は早々に遅れだす。ひとり残った日野も激坂区間を耐え切れずにメイン集団から遅れてしまう。なんとか札立峠の頂上を越え、その後は近くにいた選手たちと力を合わせひたすらゴールを目指す。
丸山千枚田の2度目の登り、そして関門所でもある頂上を制限時間内に越え、完走が見えてきたところだった。
ところが、なんとゴールまで2kmの地点の金山交差点の最終関門所で無情にもタイムアウトの宣告。あとわずかの所で完走を逃した日野もガックリと肩を落とす。
終わってみれば史上最速と言われた去年のゴールタイムよりも、更に5分速いタイムで先頭はゴールしたそうだ。
前日のレースキャンセルに伴い、全員がこの美しくも激しいコースを走る事が出来たのは、完走こそ出来なかったものの各選手が何かを感じてくれたことと思う。そして宿舎でミーティングを行い、選手それぞれの感想や今後への意気込みを聞いた。彼らにとって、とてつもなく高いレベルにあるUCI国際レースツールド熊野。そこへ向かって必死になにかをやってみること、思った成果が出なくともこの日の為に積み上げてきたトレーニング、そして挑戦すること。向かう方向は選手それぞれ違う、その進んだ先でこのツールド熊野での経験は生かされると信じている。
この日の夜は恒例となりつつある、まさ家さんでの夕食。角口賀敏会長のご厚意で選手とスタッフみんなでまさ家さんのとても美味しいうどんをご馳走になった。
6月3日、みんなで太地町で行われる第3ステージを観てから帰ることに。10.5kmを10周する104kmのレース。
この日も晴天に恵まれ、海と空の青と樹々の緑、そしてアスファルトのグレーのコントラストがとても美しいが、ほぼアップダウンで構成されるサーキットは選手たちを苦しめる。
スタート直後からアタックの応酬、総合1位のリーダージャージを守るべく走る選手たち、そして逆転を狙うべく走る選手たち、その気迫に満ちた走りは沿道で観ていた自分自身にも感じられ心を熱くさせられる。
ゴールを見届けた後、角口会長にご挨拶、そして本社ビルの放送スタジオで解説を終えた加藤GMにご挨拶してから選手たちを見送った。年を追うごとに人の温かさを感じるこのツールド熊野に、また来年もAACA選抜で戦いたいという強い思いを残し、私の20th Anniversary 2018ツールド熊野は幕を閉じた。
さて、来年も懲りずにAACA選抜として出場する予定です。
強くなりたい選手、プロを目指す選手、KINAN Cycling Teamで走りたい選手、理由は様々でもロードレースをしている選手ならば、ぜひこの素晴らしいUCI国際レース、ツールド熊野を体感してください。色んな意味で痺れます。
個人的にはAACA選抜で走った選手が、数年後のツールド熊野で日本のトップチームで戦ってるなんて姿も想像しちゃってます。
なので!そんな若い選手のみんなは、KINAN AACA CUP 1-1にエントリーする際にトライアウト希望の欄にチェックするだけでOK!後ろにいる回収車からみんなの走りを観ちゃったりしてます。
ぜひKINAN AACA CUPにどしどしエントリーして、ツールド熊野に挑戦して下さい。
なお選考対象は来年のツールド熊野開催時にU-23カテゴリーの選手であることとJCFライセンス取得者。
現時点でジュニアカテゴリーが最終年の選手も来年はチャンスです。
ツールド熊野後から翌年のKINAN AACA CUP 第3戦までが選考対象です。
ではその他スタッフ共々、KINAN AACA CUPでお待ちしています!
KINAN AACA CUPから世界へ!
Photo : Syunsuke FUKUMITSU
Text : Shinji SUZUKI