Photo : Kensaku SAKAI/FABtroni+camera
AACA選抜チームの監督としてチームカーのハンドルを握った、KINAN Cycling Teamアドバイザーの鈴木新史氏から、ツールド熊野UCI参戦レポートが届きました!
2019ツールド熊野UCI 2-2 参戦レポート
今年のツールド熊野にも、AACA選抜チームとして懲りずに参加することになった。
結果から言ってしまおう、今年もひとりの完走者を出すことが出来なかった。
この厳しい現実は2016年の初参戦以来、AACA選抜チームとしてのひとつの課題だ。
実際に去年の時点で、このAACA選抜チームの参加が本当に意味を成しえる物なのか、大会ディレクターにお伺いを立てたりもした。
ディレクターの答えは『GO!』だ。
色々な人たちの思いの詰まったこのチームは力及ばずとも今年の熊野を走り、きっと来年もまたこの熊野の地へ戻ってくるんだ。
そもそもAACA選抜チームってなんだ?って話。
東海地方で毎月行われているシリーズ戦である、KINAN AACA CUPというローカルレース。
ローカルとはいえどもKINAN Cycling Teamをはじめ、時折プロがたくさん居たりして案外レベルの高いレースになっている。
一説によると、UCIレースらしいのだが、実はUCIの「I」はIKEDAの「I」だという事。
そんなふざけた事をしゃべりながら、一応ライブ配信なんかもしている。
暇があったらぜひご覧頂きたい、というかご覧にならなくとも、ぜひチャンネル登録だけでもして頂きたい!
https://www.youtube.com/channel/UCauYHLvLVjZ-CWzuSfKiGxg
さて、前置きが長くなったが、そんな彼らの挑戦を振り返ろうと思う。
AACA選抜チームは、2019ツールド熊野UCIの出場メンバーをこの選手たちで戦うことを決めた。
竹村 拓(明治大学)、恩田 拓(SPADE ACE)、小林 弘幸(信州大学)、楠本 宏樹(三味線レーシング)、大澤 昌輝(BREZZA-KAMIHAGI)、内田 宇海(大阪産業大学)の6名。
今回の選手たちを選出するにあたり、KINAN AACA CUPでエントリーの際にトライアウトの項目を作り、ツールド熊野の出走を希望したい選手を募った。
そうやってトライアウト希望の選手を募り、KINAN AACA CUPの1-1のレースの後ろを追い、選手たちの走りをチェックするのは例年通りだった。
ただ、今までと少し違った事はレース後の会場で私を訪ねて来て、ツールド熊野を走りたいという意志を直接伝えに来てくれる選手がとても多かった事。
AACA選抜チームを率いる私にとってはとても嬉しい事柄であり、ツールド熊野までのKINAN AACA CUPはいつもと違う楽しみと共に、監督としてのモチベーションも上がっていった。
5月30日 プロローグ 新宮市 市田川特設コース 0.7km 個人タイムトライアル
監督会議及び開会式会場であるキナン研修センター。
選手たちにここへライセンスコントロールに間に合うように集合時間を知らせる。
余裕をもって知らせているものの、全員が集まるまではどうも自分も落ち着かない。
今大会唯一の2度目の参戦の楠本がその余裕を見せたのか、少しばかりの遅刻で私自身は多少ヤキモキしたが、無事ライセンスコントロールからの監督会議を終え、選手たちのスタートを待つばかりとなった。
緊張をあらわにする選手、集中した様子の選手、いつもと変わらないひょうひょうとした選手。
そんな選手たちのツールド熊野は始まってゆく。
AACA選抜の第一出走は楠本。
昨年、思わず良いタイムを出したのは第一出走の彼であり、彼の好成績を一番喜んでいたのは大谷ディレクターだっだ。
今年もその勢いをとばかりに、スタート台から飛び出していった楠本。
昨年のタイムを更新しチーム内でも一番速いタイムを出したが、順位的にはあまり良くなかったのか、彼は不満気な表情だった。
そのあとの選手たちもトラブルも無くプロローグを走り切り、明日の第一ステージへと繋げてゆく。
5月31日 第一ステージ 赤木川清流コース 100.4km
細かなアップダウンと狭いコースからのハイスピード区間、そして新たに変更された新しいコースは更にレースを厳しいものにすると予想された。
新宮市役所前をスタートし熊野川温泉さつきまでのパレード走行は、リラックスして走るプロ選手たちの中で少々緊張しながら走ったAACA選抜の選手もいたようだ。
アクチュアルスタートを切った一塊の選手たちのスピードは一気に跳ね上がる。
中盤を過ぎ遅れ始める選手たちの中、スピードの緩急に耐えてきた恩田、大澤、内田の三選手もメイン集団から遅れてしまう。
彼の力なら残れると思っていた選手が遅れてしまった。
様々な要素が詰まった中で競われるロードレースは、フィジカルの強さだけではないところの、多くの能力が求められる過酷かつ面白い競技だということを改めて感じた。
今年二度目の挑戦の楠本は確実なポジションでレースを進めていたが、ワンミスで集団から離れてしまい遅れてしまうこととなる。
昨年よりも余裕をもって走れていただけにとても悔しそうな彼だったが、そのミスを埋めるだけの力をもって次のレースには挑んでほしいと思うばかりだ。
残るは竹村と小林の二人になってしまったが、メイン集団で確実に周回を重ねるも最終周回のペースアップで苦しみ、メイン集団から僅かに遅れるも二人は確実に完走を果たし、明日の第二ステージへ繋げてゆく。
6月1日 第二ステージ 熊野山岳コース 109.3km
ツールド熊野の代名詞とも言えるだろうか、その丸山千枚田などをめぐる最高のロケーションのこのコースは、険しい登りの札立峠やその過酷なコースによって、ハードなレースをしている選手たちにはその美しい景色が選手たちの目には映りこむ事は無いのだ。
そして、竹村、小林の両選手は登りのレースが得意だと語っていたので、その走りを期待しつつレースは始まってゆく。
このコースは二度の千枚田と札立峠の登りにレースはクローズアップされがちだが、それに至るまでの道のりも非常にハードでレースを左右しかねない。
国内外のトップ選手が争うハイペースのレースの中、前半のアップダウンをこなし千枚田の一回目の登りへ入ってゆく。
だんだんと遅れ始める選手たちも増えはじめ、あの千枚田名物の大岩辺りで遅れている竹村を確認。
近くにはプロ選手たちも数名いたので、彼らとパックになり完走を願ったがそれは叶わなかった。
一方で小林はメイン集団で一番の山場である札立峠へ入ってゆく。
中盤で遅れだすものの、同じタイミングで遅れた選手たちの多くは、力のあるプロ選手たちだった。
頂上を一緒に越えた15人程のグループは、このステージの完走を確実なものにするグループだった。
そのテクニカルな下りをこなす選手たちだったが、下りの半分辺りに差し掛かったところで小林が痛恨の落車。
大腿を強打しその時点でリタイアを余儀なくされる。
そうしてAACA選抜チームは、第二ステージの熊野山岳コース、札立峠の下り半ばにして今年の挑戦を終えた。
宿舎に戻り少しミーティング。
やはり選手たちは国際レースにおいて、プロ選手との力の差、自分自身の力量を把握し、今後の選手としてどの様な事をすべきなのか、選手それぞれが彼らの解釈で方向性を少しでも見い出せたのではないだろうか。
また、スタッフ側ももっと出来ることが有るのではないだろうか、もっとAACA選抜に対してしっかりと準備を進めていくべきではないだろうか。
小林の落車を目の当たりにした今回のツールド熊野は、やはり今までのやり方を変えていかなければならない課題を突き付けられた気がする。
その日の夜は、少しばかりのお酒を飲みつつ、選手たちとたくさんの建設的な対話が出来た。
今回のレースは選手たちに本当にプラスになったのだろうか、スタッフ陣はこの程度のサポートで良かったのだろうか、このレポートを書きながら自問自答している。
4度目のAACA選抜の参加、私の思いは年々強まってゆく。
やっぱりツールド熊野は特別だ。
たくさんの人たちに支えられ、必ず来年も挑戦する!
さて、今年のツールド熊野は終わった!
もう、来年のツールド熊野へ向かって!
凝りもせず、たくさんの試行錯誤していこうか。
KINAN AACA CUPは相変らず毎月開催されるし、また僕らと来年の熊野へ向けて話をしようか。
もちろん、来年のツールド熊野を新たに目指す若い選手諸君、レースで良い走りでアピールしてツールド熊野を走ろう!
KINAN AACA CUPから世界へ!